第260回仏滅会報告

260回神戸仏滅会報告
堀江 美穂

6月4日(土)、神戸三宮センタープラザで第260回仏滅会が開催されました。幹事の篠田典子さんの挨拶に続き、まずは平賀さんから5月に開かれた追分フォーラムの報告。ご存じの通り、翻訳家延原謙が軽井沢追分に別荘を構えたことから始まったフォーラムですが、これまでは地元の認知も低く、地域を巻き込んだイベントではありませんでした。しかし今回は、フォーラム校長を務めた中尾真理さんが事前に地元FMに出演など、告知に力を入れたことも功を奏し、30回目にして初めて軽井沢町長が挨拶に来られ、当地の文化行事として広く認められることとなりました。勿論、この躍進は講師方々の素晴らしさによるところが大きいことは言うまでもありません。 続いては、神戸外国語大学名誉教授、指昭博さんから「≪恐怖の谷≫と年鑑」の発表がありました。≪恐怖の谷≫の冒頭でホームズに送られてくる暗号文の鍵「ホイティカー年鑑」。そもそも年鑑とは、中世以降、富裕層が持っていた絵入り時祷書が元となっており、占星術やカレンダーなど、生活に密着した情報が書かれた薄いパンフレットのようなもの。徐々に庶民へと広まる中で、文字情報で雑多な情報が集められるようになった。『ホイティカー』は、他の年鑑とは一線を画し、中産階級、知識人階級をターゲットに世界情勢や貴族のリストを載せるなど、高価でボリュームのあることが特徴。ホームズやモリアーティなどが持つに相応しい書物だったようです。 とはいえ、件の暗号分は、肝心の人名はそのまま記載していたり、手間の掛かる暗号変換作業をわざわざモリアーティの近くで行うなど、不自然な点も多く、ストーリーを素直に読むことはできません。イギリスの歴史も学びながら、指さんの深い読みに新たな発見ができる、興味深い発表でした。 二人目の発表者は、吉本研作さん。「初夏は自転車に乗ってゴルフに出かけよう」と題し、自転車の泥ハネやタイヤ跡について、ホームズの推理を数学的に検証しました。また、当時自転車の乗り心地を飛躍的に高めたゴムの栽培が、実はアフリカで残虐な強制労働によって行われていた歴史や、ドイルがこの残虐行為を告発する「コンゴの犯罪」を著したことなどにも触れられました。また、貴重な(?)ホームズのゴルフ中を捉えた写真も披露され、吉本さんならではの楽しい発表となりました。 今回は、初参加の会員も含めて21名が参加し、賑やかながらも和やかに進行しました。懇親会には12名が参加。大丸屋上のビアガーデンに会場を移し、初夏の暑さの中、ビールを楽しむ企画でした。発表者の指さん、吉本さん、幹事の篠田さんはじめ、皆さまお疲れ様でした。