仏滅会報告


奈良仏滅会リポート
林 千佳

10月5日、奈良仏滅会の当日としては珍しい、雨もよいの日曜日でした。遅刻魔の私も、「この日は!」と心に期し、奈良に着いたのはお昼過ぎ。実は最近気になっているお店の本店に行きたく、道を急ぎました。

 念のため、会場の女性センターに寄ると、隣のカフェでくつろぐ平賀さんとこかげさん発見。挨拶もそこそこに、「集合時間まで遊びに行きます」と伝え、カフェから出ると、初めての発表で早くもぱつぱつに緊張した小畑さんが。緊張して一気に話すことをまとめると、どうやら昼食もまだだし、そもそも先の2人とはぐれた…?らしい。「カフェに入って2人と合流したら?」、「その辺、皆が座っているところで何か食べたら?」など言いましたが、それどころではなさそうな…私のお買い物に誘うような雰囲気でもなく、「それでは時間まで遊んできます」、と言いおいてまた歩き始めたのでした。ごめんね、小畑さん。

 時間に会場に行くと、皆もう部屋に入って準備が始まっていました。私も早速、受付の席に。10月に入ったばかりですが、「2桁の月になったから」と来年の年会費徴収の欄がありました。2025年も過ぎようとしているなぁ…と感慨にふける間もなく、皆さんきっちり受付けをしようと並んで下さってます。

 会は定刻に開始。すでに20名近くが、小畑さんの発表を待っていました。ご多分に漏れず高齢化が深刻な仏滅会で、昨年現れた、なんと当時中学生の、入会からわずか1年での発表に、出席者はわくわく!いよいよ始まります。

タイトルは、「ロバの橋」。聞き慣れないこれはいったい何?一見素人には何のことやら分からない謎のタイトルですが、数学界では有名な例えの言葉とのこと。理系の小畑さん、あまり例のない数学的な切り口の発表です。資料にはユークリッドの第5定理と第5公準の証明の図が示され、おそらくはかなり久しぶりに数学の証明問題に取り組む参加者。皆真剣に熟読し、なんと小畑さんの角度の記載ミスの指摘まで…ただでさえ緊張した小畑さん、その緊張はピークに達したかのようでしたが、会場から「落ち着いて」のあたたかい言葉もかかり、和気あいあい、といった雰囲気となりました。発表そのものは短く、質問が出切っても30分ほどの時間が。そこで小畑さんが「私への質問、人生へのアドバイスでも」、と言った途端、諸々の発言 の出ること出ること!小畑さんの読書歴や、今後の進路についてまで、参加者は期待の新人に興味津々なのでした。

休憩では、有志からのハロウィンのお菓子が振る舞われました。ハロウィンらしい。目玉!や歯型!のグミに小さな悲鳴も起こしつつ、美味しく

いただきました。

後半の発表は、中尾真理氏の「江戸のシャーロック・ホームズ『半七捕物帳』」です。半七捕物帳は、大正6(1917)年発表の第1話から「彼は江戸時代に於ける隠れたシャアロック・ホームズであった」と作品中に宣言され、昭和11(1936)年まで続いた連作短編。明治5年生まれの作者岡本綺堂の経歴に始まり、それゆえか「半七捕物帳」が意志を持って、消えゆく江戸の風物や情景を書き留める作品になったこと。また、発表された年代が、欧米の本格派推理小説の黄金期に重なり、東洋の端の小さな国で、後れを取らずに推理小説が受け容れられていったことを感じました。半七自身の人物設定など、如何に綺堂がホームズを意識したかが自身の言葉によっても明らかにされているようです。私にとって、「読んだ読んだ!内容は忘れたけど」というミステリ界に名を残す数々の書名に接し、心ゆくまで読書した懐かしい時代の雰囲気にしばし浸ることもできました。今の私たちがホームズシリーズに感じる、ヴィクトリア朝への郷愁と「半七捕物帳」の江戸への思慕、読み続けられる作品には、推理だけではない、作品そのものが醸す何かがあるなあ、と思いました。「半七捕物帳」、また読みたくなりました。 

会終了後は、いつもの中華レストランの予約時間まで、奈良の商店街を歩いたりお買い物したり。実は奈良ではおいしい中華の後、小さなバーでひっそりと季節のカクテルやクラフトビールを楽しむこともできます。「いいな」と思われた方は、ぜひ次回の奈良仏滅会へ…