第261回仏滅会報告

第261回仏滅会報告
眞下庄作

8月の例会仏滅会は、北陸に線状降水帯が居座る中、3年ぶりにコロナ対策がされた大阪堂島の中央電気俱楽部で副幹事役の出嶋美千子さんのお世話になり、二人の講師を迎えて開催された。
 最初の講師は、「京大ミステリ研」の初代編集長をされ、例会発表やアンビグラムトランプの記念物でお世話になる有名弁護士の大川一夫さん。
 表題は「聖典を衝け!~模倣の研究」である。
 晴天を衝け!では、穂積陳重(1855-1926)が若くして英・独に留学して日本で初めての欧米の法概念を受け入れる困難や文化を取り組む姿勢は、新しい時代をつくる中、「模倣」の天才であったという。
 晴天のへきれき、著作権法の例外として「引用」「講義」許されることからパロディ・パスティッシュの合法性については、最高裁の判断基準を例に、合法・違法の境界線が難しいため「リスペクト基準」なる説が提唱され、かなりの数のパロディが許容されている、我々が「聖典」をリスペクトしている限り、合法といえる。
 正転、日本文化の中に、パスティッシュ、本歌取り、模倣は存在し、小説や映画の①「シャーロック劇場版・バスカヴィル家の犬」②ヒット漫画の映画化編「キンダムⅡ」③リメイク編の「キャメラを止めるな」など、①~③は、いずれもリスペクトが伺える、という。晴天白日、聖典においては無数のパスティッシュ、パロディがある。(2)民法改正で新たに研究されている。(3)穂積陳重の偉大さとして、
 ①明治時代に日本の民法を作った。
 ②それまで、日本にはなかった「法」の概念を学んで、それを導入した。
 ③その日本民法は独逸モデルである。 ④英ロンドン大学に学んでいる。(1876‐1880)。その後、独ベルリン大学で学ぶ。
 ⑤穂積陳重の作った明治民法は独モデルなのに何故か民法416条は英の影響を受けている。
 ⑥在英中、大英博物館で学んだ。⑦居所は、ロンドン大学、大英博物館、モンタギュ街に近い所である。
ここまでは事実であり、後の研究でも裏打ちされている。何故民法416条が影響なのかという謎が残る。考えられる憶測は…。ホームズ曰く「ぼくは憶測なんかしたことがない、憶測は悪習だ。論理的才能に破壊を及ぼす」でおわる。(四つの署名)票題を例に、粋な洒落は最後まで続いた。
 次の講師は、1980年代の中学時代に「ベイカーストリート・ジュニアーズ」の会長として大活躍され、40周年記念例会発表等でお世話になり、大学で教鞭をとられる鬼丸武士さん。表題は「ホームズ以前・ホームズ以降」-情報と監視の近代-である。
 新型コロナ・ウイルスのパンデミックと監視を例に、現代の監視の特徴について先端科学技術の活用、個人の情報がビッグデータに、監視されてる事に気づかない、気にしない現状がある。ホームズの凄さは、《緋色の研究》に世界で唯一の諮問探偵として大都会の中で犯人を特定、見つけ出し、捕まえる、→ここがすごい。
 ホームズの特徴は、先端科学技術の活用・信頼→身体計測、指紋、医学…。データ・情報収集とその活用→BSI、知識、新聞、百科事典など。 ホームズ以前・以降の違い、
 ①1880年代から1914年という時代→都市化、植民地、科学技術の進歩、人の移動の活発化。
 ②現代に繋がる諸問題→感染症のパンデミック、テロ、「外国人への監視・取り締まり、不確実性、不確定性。
 ③Mass surveillanceと情報収集の始まり。
 ホームズは、前近代までの「監視」の世界と近代以降の「監視」の世界への変化を象徴的に体現している存在である。先端科学技術を活用した「監視」で出来ることは?ジョージ・オーウェルの「1984」になるのか?→プライバシーで議論しても無力。→思想信条・言論の自由を守り、行政や企業の記録の保存・公開を進めるスキームや歴史の審判に耐えうる政治・社会体制の構築が求められる。ご両人のWEJに掲載を期待する。