19年12月の話題

『シャーロック・ホームズ紀要』第26号を発行

 日本シャーロック・ホームズクラブ(JSHC)内の研究組織である日本シャーロック・ホームズ研究委員会では、2019年12月1日付で『シャーロック・ホームズ紀要』第26号を発行した。
 JSHCの会則には、会の目的として「研究」と「親睦」の二つが掲げられている。研究といっても、小・中学生の自由研究、高校生のレポート、大学生の各種レポートや卒業研究、大学院の学位論文からノーベル賞が授与される研究まで各段階のものがあるが、ホームズ紀要が目指すレベルは、題材は架空の人物や推理小説に描かれている事実であるが、論法などは大学生レベルの論文形式を求めている。
 今回採録されているのは、次の8編、いずれも新しい発見や解釈が提起された力作である。
○鈴木利男 「コナン=ドイルは二重姓~複合姓説再論~」 正典60編の年代学とコナン=ドイルは二重姓であることを終生研究した筆者の絶筆となった論文。 出生記録や墓碑銘などを広く調べて、姓は「ドイル」ではなく「コナン=ドイル」であることを明らかにした。
○林 庄宏 「THE DANCING MEN~暗号のミステリー~」 ほとんどのシャーロキアンが見逃している《踊る人形》の暗号が、版によって人形の形に差異があることを徹底して調査し明らかにした詳細な報告。
○佐々木一仁 「ホームズとケインズ」 偉大な経済学者ケインズの半生を調査し、ホームズと性格が類似していることと、ホームズの隠棲地の近くの農園に住み、二人は交際したた可能性を提起している。
○新野英男 「ホームズ世界における死の統計~ホームズVSポワロ~」 正典登場人物の死因をすべて調べ上げ、その特徴とポワロとの比較を論じている。
○福島 賛 「シャーロック・ホームズのルーツを探る」 ホームズの生涯やファミリーヒストリーを調べ、姓名のルーツについての新しい仮説を呈示。
○飯森洋一 「29インチでなぜ晴れていたか?~気圧計の値から分かるヘルフォード館の場所~」 《ボスコム谷の惨劇》で気圧が通常なら雨天を示す29インチなのに晴天でホームズは翌日も晴天と推定たことについて、気象学的に解明している新説。
○眞下庄作 「書簡集からみるアーサー・コナン=ドイルの冒険」 コナン=ドイル生誕160周年にあたり、本人の書簡によって1894~1899年のコナン=ドイルの言動について報告している。
○平賀三郎 「オレンジの種六つ」 《オレンジ種五つ》の事件の最大の謎である、何故南軍の将校で奴隷解放に反対して戦ったオープンショウが、かつての同志ともいうべき秘密結社K・K・Kに命を狙われた かを六つ目のオレンジ種にたとえ、これを解明する。
 研究委員会では、引き続き2020年度版も発行を予定している。採否は査読の上で決定されるが、テーマをお持ちの方は取りまとめられることをお奨めします。