第256回仏滅会報告
10月第256回奈良仏滅会レポート
渡辺利枝子
10月3日日曜日、昼の12時半、絶好の行楽日和である。が、私はタクシーの中で焦っていた。緊急事態宣言が明けての初の休日、車が混んでいる。結局、奈良県立女性センターの部屋を開けてもらえる12時45分を少し過ぎて到着、皆さんをお待たせしました。どうも申し訳ありませんでした。そもそもなんでタクシーに乗らないといけなかったかってことですよね。
奈良までお越しくださったのは計16名、皆さん、遠いのにいつもありがとうございます。
まず、中尾真理先生の発表「ホームズがワトスンに話さなかったこと」。中尾先生、寝る前に読むのにおすすめのネロ・ウルフの紹介から、ホームズとの対比へ。レックス・スタウトは本国では今も人気だそうだ。太っていて美食家の安楽椅子探偵のユーモアミステリー、難点はワトスン役のアーティが頭が良すぎて、ウルフの推理をすぐ理解して説明してくれないので、わからないことがあるそうで、なるほど、いろいろ質問してくれるワトスンはそういう意味でも優秀なわけだ。
本題のホームズがワトスンに話さなかったことだが、いつものように年代順に書き出してくださってわかりやすい。それをみるとホームズとワトスンの同居期間は意外と長くないし、疎遠だった時期も意外とあると言うことだった。
質疑応答に入って、中尾先生はワトスン結婚一回説だ。ベアリング=グールドのネロ・ウルフはホームズとアドラーの間の子説も質問されていたが、中尾先生はその説は取らないそうだ。
ティーブレイクに続き近況報告、情報交換があり、後半の外海さんの発表になった。
「ホームズとゴシック」ゴシックとは外海さんがはまっている18世紀後半から19世紀初めにかけて流行したおどろおどろしい舞台、波瀾万丈なストーリーの一連の小説のことなのだが、実はこの発表、ウエストエンド・ジャーナルの予告では「ゴシップ」とミスプリントされていた。外海さんはそれを逆手に取って、ワイドショーを賑わしている内親王のご結婚に絡めて、ユーモアたっぷりに紹介していった。コナン・ドイルにも大きな影響を与えていて、『バスカヴィル家の犬』はその代表である。ゴシック小説との関連性のリストなども紹介されていた。外海さんの名調子に一同すっかり魅せられて、終わる頃にはゴシック小説を是非とも読まなくてはという心境になったはずで、かく言う私も一冊購入したのである。
大変に盛り上がったのだが、この会場は16時半までなので、質疑応答の時間がなくて退出、二次会は向かいの中華料理店で17時からなので、立ち話で質疑応答もなされたと思う。残念ながら今回の発表者のお二人は学生に講義するお立場なので会食は四人までの制限があり、二次会には参加されなかった。
余談ながら三次会はいつものバーの席があくまで猿沢池巡り。夜目にもお洒落なカフェがたくさんできていてライトアップされた興福寺五重塔も美しかった。ただし、来年には明治以来の大修理に入るので、来年は見られない模様だ。
お連れ合いの賀久子さんを亡くされた原田実さんも三次会までご参加いただいた。賀久子さんの不在に慣れることはない、温泉や美味しいものを食べても彼女が喜ぶのを見るのが目的だったんだと気付いた、でも、何かするたびに賀久子さんならこう言っただろうと感じて、自分の中に賀久子さんはいるとおっしゃっていた。ライヘンバッハの向こうに渡られた物故会員の皆さまも私たちと共にいてくださっているなぁと感じた。原田さん、ありがとうございました。そして私たちみんな結構な酔っ払いだったので、JRに乗るはずだった原田さんを近鉄奈良駅まで連れてきてしまってごめんなさいです。