イベリア半島南のマラガから北上してきたこのツァーも最後の訪問地バルセロナに来た。
地中海に面した一大港湾都市であり、カタルーニャ地方でも歴史ある大都市だ。
特急列車でバルセロナに入り、早速市内観光となった。真っ先に案内されたのはバルセロナといえばあのガウディの代表作であり、世界遺産であるサグラダファミリア教会だ。この建設開始から140年以上たつ未完成の大聖堂はこのツァーの目玉でもある。
ここでガウディについて詳しいという現地ガイドさんと合流した。ガイドさんはバルセロナ在住の日本人でガウディが好きでバルセロナに住んでいる方だ。そして自らガウディオタクであるとおっしゃった。(好感度が一挙に上がったのは自分もオタクになりやすい体質だからだ。)
近くで見るとファサードいっぱいに飾られた彫刻群はやはり迫力がある。ガウディの生存中に完成され、同じく完成していた地下礼拝堂とともに世界遺産になっている有名なファサードだ。数多い彫刻はそれぞれイエスの生誕の物語を表し、そのなかに神秘的な表徴を隠している。

彫刻群の中でもひときわ美しい、聖母子の像の赤ちゃんのイエス様の頭の上に鳩がとまっていた。下から見るとマリア様がその鳩にやさしく口づけているように見える。ガイドさんがガウディについて色々お話くださっているのにわたしはその失礼な鳩が気になってしかたなかった。
よく見るとファサードの柱の基部に大きなかめさん。その他にも動物やら鳥やら虫やらいろいろな動物が飾られている。びっしりと彫刻に飾られた聖堂は他にも多いが、このように生きとし生けるもの全般がいるファサードは初めて見た。あの鳩も生き物(実際に生きてる)の一つだ、許そう。(何をえらそうに。自分)
聖堂の内部は木々を表していると言われる柱が天井に向かっていくつも伸びて、そこにステンドグラスから自然光が差し込んで夢のように美しい。正面の祭壇上の金色の輝きも自然の光の反射だ

聖堂を出てすぐのところが「受難のファザード」だ。三つのファザードの内、未完成の「栄光のファザード」をのぞいて完成しているファザードで、ここはやたらモダンな彫刻に飾られている。キリストの受難の物語があらわされているのだが、ここへ来て「謎」を見つけた。
出入り口の上には二つの三角形が底辺をくっつけて上下に並べたような紋章がある。なんだ、これは。
そして、エスがユダの裏切りを受けるシーンの下部に数字を書いたプレートが彫られている。私の物好きな興味がむくむくと沸き上がる。魔方陣だ!縦4,横4の16のマス目のそれぞれに1から16の数字が入り、その縦、横、斜めの数字の合計が同じになるという。科学と魔法が同列に考えられていた中世の昔には神秘的だと考えられていた。
ガイドさんは三角の紋章については解説してくださった。三角の紋章はキリスト教における「誕生と死」をあらわす「アルファ、オメガ」なのだ。しかし、魔方陣については解説ナシ。気になる~~。よく見るとその4×4の魔方陣には12と16がなく、10と14が二つずつある。これってアンフェアじゃない?私が4×4の魔方陣として知っているのはデューラーの版画「メランコリア」に描かれた魔方陣だ。そこにはこんな「ずる」はないぞ。
あとで地下のお土産屋さんできっちり三角の紋章と魔方陣のグッズを手に入れた。
実はわたしめ、子供の頃からこういう「神秘的なもの、不思議なもの」について多大な興味を持っていた。小学生の頃「不思議だが本当だ」系の本を読み漁り、今ホームズ物にたどり着いたのもその延長といえる。もちろん、いわゆる悪魔を呼び出すという円形の「魔法陣」に凝ったこともある(!)数字の魔方陣について知ったのも小学生のころで、3×3の魔方陣なら生意気にも一時いじくっていたことがある。あのころはまだ、数字が好きだったのだ。今のように数字が苦手になったのは学校で「数学」を勉強するようになってからだ。(と、数学嫌いを学校のせいにする)デューラーの版画に興味を持ったのも描かれている天使さんが男前だっただけではなく、魔方陣はじめ神秘的で表徴的なものがびっしり描かれているからだ。
あとで調べたところ、4×4の魔方陣は縦横斜めの数字の合計が34になるはずが「受難のファサード」の魔方陣は縦横斜めの数字の合計は33になっている。これはイエスが磔になった年齢を表しているらしい。そのため、ユダの裏切りのキスを受けるイエスの像の横にあったのだ。
通常34になる魔方陣の数字を33にするために10と14を2度使うというイレギュラーが起こっているわけだが、わたしよりもっと物好きな人がいて、のちに合計が33になる4×4の魔方陣を発見した人がいるという。(それでも通常1からの数字なのに0が入り、4が欠けている。これもイレギュラー)
サグラダファミリアには他にも神秘的な表徴があるらしい。設計者ガウディもかなりな物好きだったというが、その後を継いだ世界各国から集まった建築家や芸術家のなかにも物好きが多いのだろう。
このオタクども(失礼!)が作った壮大な芸術作品は、来年の2026年に完成するという。まだ形のない「栄光のファサード」がどんなものになるのか、そこにどういう表徴が隠されているか。実に楽しみだ。(きっと私は再訪するのは無理だろうけど。)
下の画像 右;「受難のファサード」の魔方陣 左;デューラー画「メランコリア」の魔方陣
