灰色のロバに会いに

 スペインの詩人、ファン・ラモン・ヒメネスが書いた詩文集「プラテーロとわたし」に出会ったのは小学校の図書室でした。
ホームズの物語やそのほかの探偵たちが活躍する本と出合ったころより少し後の事だと思います。その時も長新太さんの特徴的なイラストに惹かれたのだと思います。
その本はその頃私がむさぼり読んでいた(本当にごはんを食べるのも忘れて本をよんでいました)他の本とは違っていました。短い文章と長さんの優しげなイラスト。ストーリーらしきものはありません。でも、そこにはそれまで知らなかった世界がありました。
 真っ青な空に容赦ないほど輝く太陽。遠くに見えるごつごつと連なる岩山。乾いた大地に立つ白い家々。その太陽が照り付けるが故に深い影を作る戸口の中にはそこに根付いて暮らす人々がいます。人々は貧しく、子供たちは決してきれいとは言えない衣服から日に焼けたお腹を見せてはだしで走り回り、しかし、幼いながらそれぞれの夢を持っています。
 白い家のパティオ(中庭)には深い井戸。広場には太陽にきらきらとガラスのように光る水を噴き上げる噴水。それこそ、変わらない「日常」の物語。
 スペインはアンダルシア地方の光景は湿気の高い日本に住む私にはまさに異郷でありました。その時からアンダルシアは私のあこがれの地となったのです。
 ホームズ物語にはまり、ついにJSHCの会員になっても一番行きたい外国はスペインでした。ロンドンには縁あって関西支部の方々と行くことが出来ました。私の英雄、フリードリヒ二世のお墓のある、ポツダムはサンスーシー宮殿にも行きました。
 そしていよいよ我が妹とスペイン旅行を計画した矢先、コロナ禍がやってきました。
 スペイン旅行を計画した時からすでに7年。あの本にであってからは半世紀以上。ようやくスペインに行くことができました。
 お仕着せのツァーです。やはりヒメネスが愛した「お月さまの銀の色」をしたプラテーロのようなロバに出会うのはかないませんでした。でも、あの抜けるような青い空とギザギザの岩山の風景を観て来ました。

2024年11月30日