聖母の為に鐘は鳴る(管理人スペイン道中記2)

 マドリード。このスペインの首都の中心である、堂々とした王宮を見学している我々観光客の他に王宮前の広場に多くの人がいる。こちらの正装であるという、黒いドレスに高く髪を結い上げて大きな櫛とベールを飾った女性たちも多い。いわゆる、スペインの伝統衣装として思い描くそのままだ。男性も黒い服と帽子に身を包んでいる。大きな花束や旗、飾り物(何と言うか知らない)を手にしている人もいる。人々は続々と王宮の隣に建つ大聖堂に向かって行く。
 「今日はお祭りですね。ミサがあるようです。」添乗員さんがそう言ったとき、突然大きな鐘の音が響いた。大聖堂の鐘が鳴り出したのだ。これまでの旅行で教会の鐘の音は聞いたことはあるが、このような音は聞いたことがない。空気全体がびりびりとふるえている。鐘楼の巨大な鐘が一斉に動いていのだ。この大都会の上に広がる青空いっぱいに鐘の音が広がって行く。ミサの合図なのかもしれない。
 聖堂の前で鐘の音を聴く人々は盛装の人が多く、皆笑顔だ。伝統衣装の他に前世紀初めに戻ったような粋な服装の紳士、淑女たちもいた。高揚感のある華やかな雰囲気は、やはり「お祭り」だからだろう。
 やがて大聖堂から一台のみこしがしずしずと大通りに出て来た。白い衣装のたくさんの人々に担がれ、その上に花に囲まれたマリア様の像が乗っている。そのみこしの後には大勢の黒い服の一団が飾り物や旗を掲げてついて行く。このマリア像がマドリードの守護聖母である、アルムデナのマリア様。このマリア像はその昔、マドリードがイスラム勢力に支配される前、破壊を恐れて城塞の壁に隠されたのだとか。その後レコンキスタによってカソリック側に都市が取り戻された時、奇跡的に壁の中から発見されたという。アルムデナという名はアラブ語の「アルムダイナ(城壁)」から来ているらしい。(これは後で調べた)
 スペインが今も強固なカソリックの国であるのは、イスラム勢力から長い年月をかけて国を取り戻したという歴史があるからだろう。
 美しい神輿は粛々と交通規制された大通りを進んでゆく。
 こちらのお神輿は日本のと違って静かに行くんだな、などと感心していると、いきなり後ろから肩を叩かれた。添乗員さんだ。「やっと見つけた!」どうやら私はお祭りに気を取られてツァーのグループからはぐれてしまっていたらしい。皆さんに迷惑をかけてしまった。反省。

2025年02月04日