あかね書房 少年少女世界推理文学全集

先日、借り出した本を返却しに市の図書館に行きました。そして、いつものように無償で譲ってもらえる「リサイクル本」のワゴンを覗きに行きました。前に掘り出し物を見つけてから習い性のようになっているのです。
 そこで思わず「うそでしょう!!」と声を上げてしまいました。なんとそこにあの、あかね書房版の少年少女世界推理文学全集のうち8冊がずらりと並んでいたんです!!!信じられません!
「本当にこれ、いただいていいんですか?」と職員の方に確かめ、トートバックに入れる手が震えました。
 図書館蔵書の払い下げ。あちこちシミだらけ。ページも変色した古い児童書に何を興奮しているかって?この子供むけ推理小説全集こそ、わたしめのミステリー好きの原点なんです。

 この本に出合ったのは遠い過去、小学校の図書室でした。子供用のミステリーの本は他にもありましたが、いかにも的などぎつい表紙の本が多い中、モダンでしゃれたデザインとイラストに惹かれました。
 そして、全20巻の内容も後から思えばすごいラインナップだったのです。
 アガサ・クリスティー、エラリー・クィーン、ヴァン・ダイン、クロフツ、ディクスン・カー、等々ミステリーの巨匠達の名作がずらり。もちろん、シャーロック・ホームズも。ホームズ物は2巻ありました。
 小学生の私はこの全集でミステリーにどっぷりとはまりました。借り出せる冊数は限られていたので、他の子に借りられるのがいやで次に借りたい本を本棚の後ろに隠す、というこすっからい手も使いました。そして、その大好きな本を自分のものにしたくて、小遣いやお年玉で少しずつ買い集めたのです。(そのころから本の収集癖があったらしい)
 あかね書房の推理小説全集で読んだ作家はシャーロック・ホームズについては言うまでもなく、今も大好きです。あれから、ん~~十年の間に読み貯めたミステリー本は本棚を埋めています。しかし、あかね書房の本はありませんでした。
 私が結婚して家を出た後、母が残していった私の本を処分してしまったのです。私がそれに気が付いた時にはすでにあかね書房の推理小説全集は絶番になってしまっていました。
 その後、仏滅会で大阪の中央図書館の地下書庫を見学する機会がありました。そこでたまたま、あの全集が所蔵されているのを見たのです。子供のころのどきどきが蘇りました。
 あかね書房版少年少女世界推理文学全集をもう一度手に入れたい!そう思いました。しかし、古い本ですので古本屋にもなく、ネットではかなりの高額になっていました。
 今はもう亡い母を恨んでも仕方なく、手に入れるのはあきらめていました。その本が8冊もそろって目の前にあったら、それは叫ぶでしょう?もう、神や仏に感謝するしかありません。
 今、なつかしい本を開いて裏表紙に貼られた古めかしい貸出票や誰かがつけたページのシミもほほえましく見ています。長い年月の間にかつての私のようにこの本を楽しんだ子供たちがいたのです。

 さて、この文章を終わって本を読みましょう。あかね書房版少年少女世界推理文学全集、第2巻「シャーロック・ホームズの冒険」中の「バスカービル家の魔犬」もいよいよクライマックスです。

2021年03月23日