第267回大阪仏滅会報告
眞下庄作
台風の来襲、熱中症警戒アラームのあるなか仏滅会は、副幹事の山本公代さんと大勢の参加者を得て会場は中央電気俱楽部で開催ができた。最初の発表は、大川一夫さんの「松田道弘とシャーロック・ホームズ」。松田氏の著作本「とりっくものがたり」や所有され大川氏に献呈された大辞典などの貴重本が回覧され発表をされた。
松田氏は、学生時代に本格的に奇術文献を研究、卒業後はラジオ関西に勤務・退社後は奇術、ミステリ、ゲーム、ジョーク、パズルなどの著述家として推理作家協会賞の評論その他の部門で2回も候補者となる。1984年8月の仏滅会で「トリックにおけるミスディレクションの重要性と意外性の面白さ」の題名で記念講演、合間にマジック、最後は、ラジオ関西のプロによる競馬実況の声で「競馬の予言」 を発表された。
ホームズ本などの膨大な蔵書、晩年には古書店三店に引き取られたとのこと。大川氏は、物心ついた時から親の影響で将棋、マジック、パズル等をデイ―プランニングされ、幼少期にとりつかれた趣味は終生かわることのない趣味となり、1978年の京大11月学園祭の奇術研究発表会で松田氏と出会い、松田イズムにそまる。ホームズ論の談義については大川氏の著作『ホームズ!まだ謎はあるのか』(一葉社・2017年)に詳しい。今後、聴いて使うトリックなどアイデアを熟成して発表されるそうである。
次の発表は、大学で心理学の教授をされている増田匡裕さんの本邦初の「Q技法を用いたシャーロキアンのファン心理意識調査」である。
目的と意義では、それぞれの経験や価値観による賛否両論があって、意見が分かれるのが当たり前のテーマや「総論賛成・各論反対」の理由を調べるのに優れた学術的手法を厳密に用いたシャーロキアンの心理意識調査法である、と説明があった。
今回は、「ホームズ物語60篇について語り合いたい気持ち」を調べるもの。同じ60篇を読んだ仲間でも、作品の好みが人によって違い、人気投票の結果をみても、自分の思いとは違うな、などと「思い入れの違い」への疑問を解決することができるのがQ技法である。例えば自分の好きな作品が一推しという人と話していて、他の作品についての見解が異なるのは何故か、という鍵を解く鍵を見つける手法として「Qソート回答用紙」に、作品60篇の付箋を、「ある程度話についていける」22編ゼロを真ん中に左右対称に、「語り合いたい19編プラス」、「話すことがない19編マイナス」、山型の枠60箇所に1枚ずつ貼り付けて提出した。本邦初の試みで次の例会で回答者を伏せ、結果について例会で語り合えるのが待ちどおしい。
ティブレイクの後は、参加者の皆さんが楽しみの近況報告で、ホームズ本の回覧、支部のホームページについての検討などが話題となった。 最後の発表は、古田リツ子氏のパワー・ポイントによる「イギリス、ホームズゆかりの地訪問」である。ホームズ事件現場への鉄道やバス、車や徒歩などの所要時間も入れられた字幕と素晴らしいカラー映像で詳しく説明された。
例えば《プライオリ学校》をはじめとするホームズの旅では、Holmes &Watson Country Travels in Seach of Solution (Bernard H.Davies-2008)で事前に旦念に調べられ、英国内は、The Games is Afoot(David L. Hammer-1983)などを利用されている。未訪問事件簿は、《悪魔の足》、《白銀号事件》、《最後の挨拶》、《マスグレーヴ家の儀式》の4事件。ベルギー滞在中のホームズの旅は、英国2011.4~2020.3計80回、延べ323日。その他の国2015.9~2020.2計19回、延べ54日。スイス、フランス、イタリア、オランダ、ベルギーとある。乞う期待。
歴史のある近代化産業遺産の会場建物のビリヤード室内などの見学会が行われた。解散後、懇親会はビヤーガーデンで花火見物となった。