第266回神戸仏滅会報告
篠田 典子
2023年6月3日(土)に兵庫県民会館で第266回仏滅会が開かれた。前日近畿地方は大雨に見舞われ、仏滅会当日も交通機関の乱れから参加者が集まらないのではないかと心配したが、蓋を開けてみればたくさんの方がお越しになり、大変盛会だった。会場となった部屋が少々わかりにくい場所にあったため隣の会議室の方が間違って来られるなどハプニングもあったが、副幹事の秦浩洋さんがかわいらしい表示を書いてくださっていて、無事定刻に始めることができた。
1つ目の発表は、吉本研作さんの「ホームズと暗号」。今回の資料とともに当時のイラストなどを復刻した5月の追分フォーラムでの資料も頂いたのだが、どちらも力作でいかにも吉本さんらしいものであった。また、資料に“踊る人形”が印刷されていたのでお聞きすると、インターネットで検索すれば“踊る人形”のフォントが出てきて使用できるとのことであった。デザインやイラストに関しては吉本さんは本職なので、毎回すばらしい作品(!?)を見せて頂いたり知らないことを教えて頂いたりと、面白尽くしである。
ティーブレイクのあとは、みなさんの近況報告と情報交換の時間である。私はいつもこの時間を楽しみにしている。ホームズのことを話すのはもちろん、イギリスに関することや映画や芝居の感想などが広く話題に上がる。また、新しく出た本やホームズ関連の貴重な本が回覧される。必ずしもホームズネタでなくてもよいので、個人的な話題や報告をされる方もある。いずれにしても、関西支部会員は幅が広く、おひとりおひとりを知ることができるとても有意義な時間といえよう。
後半の発表は、増田匡裕さんの「《黄色い顔》でホームズが一体何を『失敗』したというのか ②」である。4月の発表の続きということで、奥深い取り組みがうかがえ、増田さんの《黄色い顔》への強い関心と深い思いが伝わってくる。《黄色い顔》と言えばホームズの失敗談ということになっているが、増田さんは、同じく不本意な結末に終わる《オレンジの種5つ》と比較している。ワトスンは《黄色い顔》では「失敗(failure)」という語を用いているが、《オレンジの種5つ》では「失敗」と言わずに「瑕疵(flaw)」つまり「傷」と表現しているそうだ。依頼人を救えなかった《オレンジの種5つ》が失敗でないなら、《黄色い顔》での何が失敗だったのか。増田説では「誤謬の多い簡易的な仮説演繹法を用いたのが失敗」、つまり「ホームズが“手抜き”をした」というのである。なかなかスリリングな説である。この発表は8月に続くそうなので、続きを待ちたいと思う。
活発な質疑応答ののち、一次会は終了した。二次会は、県民会館から徒歩で行けるトアロードの「ダイニングパブ 英国館」へ。以前WEJでも紹介された店だ。フィッシュアンドチップスなどの料理ももちろん楽しみなのだが、みなさんのお目当てはパブに併設された「アンティークギャラリー」だろう。同店にはたくさんの貴重なコレクションが展示されている。中でも、関西支部会員ならホームズシリーズの原書やドイルの直筆の手紙に目が釘付けになるのも当然である。写真撮影やらギャラリーの館長への質問やらで大混乱、お店に着いてから席に座るまで大変な騒ぎとなった。とても一度の訪問では見終わらないので、どなたも近いうちに再訪されるのではないかと思う。次に神戸で仏滅会を開く際(来年かな?)も二次会は「ダイニングパブ
英国館」でお願いしたいと考えている。今回参加できなかった方も、次の機会に一緒に見学しませんか。