第250回仏滅会報告 渡辺利枝子
コロナ禍により4月仏滅会、5月追分フォーラム、6月第250回記念例会と次々に延期、中止となっていき、やっと8ヶ月ぶりに奈良で第251回として例会を開くことと相成った。元々、奈良例会は神戸はもとより大阪、京都からも距離があるため、お天気の影響も受けやすい。参加人数が読めないのだが、今回はなお予想がつかない。折角の再開であるのにシャーロッキアンの集まりでクラスタ発生とはなりたくない。それなりに対策を立てることとした。まず、マスク着用。アルコール系消毒液で手指消毒。それから、ティブレイク時、いつもなら大きなペットボトルから紙コップに分けるのだが、飲み物は各自用意することにした。配るお菓子も個別包装で手を触れずに食べられるもので。そして、万が一、誰かが発症した時のために連絡先を記入していただくことにした。
結果は天気にも恵まれ、総勢13名。よく参加している方が多かったが、新入会員の西原さんの参加もあった。会場の奈良女性センターはアクリル板の仕切り、空気清浄機も設置されて、換気もでき、良い条件で会ができたと思う。
発送作業も済み、幹事の渡邉からコロナ感染予防の注意などさせてもらい、いよいよ最初の発表は東京からみえた新野さんの「ホームズの世界に生きる子どもたち」である。4年前の発表で、当時の一般的な家庭の調査が不十分だったと再度練り直したものである。ヴィクトリア朝は出生率が大きく低下する一方、全年齢の死亡率も下がり人口は急増した時代。子どもを少なく産んで大事に育てる方向に変わりつつあったが、乳児の死亡率は下級労働者層ではあまり改善が見られず格差が広がっていた。それを踏まえて正典に登場する53組の子どもたちについて社会階級、家庭環境、教育・労働、事件との関わりなどについて検証した。各階級満遍ないが、人口比の割には上流、アッパーミドルが多い。教育、労働環境の描かれ方は当時の社会階級に応じている。殺害、病死のリスクが高く、犯罪に巻き込まれがち(探偵小説なので仕方ない)となり、最後に参考文献が皆に回覧された。
ティブレイクを経て、恒例の近況報告・情報交換となったが、テレワークでこもりがちな人、かえって忙しい人などいる中、予定していた旅行がキャンセルとなった方が複数おられるのもらしいなぁと感じた。見吉さんから追分フォーラム用だったウィスキー情報とクイズが提供され15問中13問正解の猛者もいたとかであった。
後半は中尾真理先生の「《恐怖の谷》とカントリー・ハウス」。《恐怖の谷》第一部は二重の堀に囲まれたカントリー・ハウス、バールストン館における密室殺人であり、『赤い館の秘密』『本陣殺人事件』など後継作を生み出した。ホームズ譚に登場するカントリー・ハウスをリストアップ、荘園領主の世襲のもの、所有者が新しいもの、不明のものに分け、それぞれ、名前、場所、所有者、資産の出所、使用人をわかりやすい表にしてくださっている。Park
とはマナーハウス(領主館)を囲む森林や猟林、大庭園をさしたなど、作品を読むにあたってイメージが鮮明になった。新野さんの子どもたちの表と相まって、これからも参考にされる資料だと思う。
その後、福島さんから4月の分が11月に回った来月の第249回豊中市立文化芸術センターでの仏滅会、森田さんから6月が12月になった関西支部40周年記念仏滅会(第250回)のお知らせがあり、終会となった。 二次会は向かいのチャイニーズレストラン飛天で例年通り行われ、参加者は8名だった。この8名が濃厚接触者となるが、3週間後の現在も発症者の話は聞いておらず、8ヶ月ぶりの仏滅会は無事に終了したと思う。お互い気をつけて、元気に11月、12月と楽しい会を持ちましょう。