第262回仏滅会報告

第262回仏滅会報告
渡辺利枝子

 10月1日土曜日はお天気にも恵まれ、良い会でした。午前中はもうすぐ解体修理になる興福寺五重塔内部拝観された会員もいたそうです。今回の副幹事は林千佳さんにお願いしました。
 最初の発表は追分フォーラムでの平賀さんの発表での呼びかけ「JSHCで実吉先生に否定された『まだらの紐』トリック、成立させる妙案を持つシャーロッキアンよ出でよ」に応えて三人の会員が調べまくったことをパワーポイントで発表。
 追分フォーラムの後に訪ねた軽井沢タリアセンで18世紀女性博物画家の展覧会があり、ワニと格闘するまだらの蛇が皿からミルクを飲んでいるように見える絵を見たのだそうだ。その「ミルクヘビ」は牛乳を飲むとされていたが無毒、似た柄の有毒ヘビがいる、ヘビに牛乳を飲ませることはできなくはない、紐を戻ることはできるんでない?とまではわかったんですが、トリックを成立させるのに適当なヘビは発見できず。けれど活発な意見交換ができて大変楽しかったです。
 「パワーポイントに動画は入れられるのだが、皆さんの安眠のために敢えて入れなかったんです」、「夜釣りで釣った大きなアナゴに腕に巻きつかれ海蛇と思って悲鳴をあげてしまった、その巻き付く力の強かったこと!」などと森田さんの迫真の描写力にジュリア・ストーナーの恐怖がひしひしと伝わってきました。真下さんが持って来られた貴重な資料も回覧していただきました。もう一人の発表者中尾さんは11月に英国児童文学の研究会でコナン・ドイルと少年誌のシンポジウムに参加されるそうです。シャーロック・ホームズ 以前の児童向けの作品には ホームズ の種があるとかで、モリアーティの職業だったアーミーコーチも出てくるそうです。
 近況報告、情報交換。西岡さんはホームズの横顔付きトートバッグを買い、ツイッターにアップしたら、北原尚彦さんにホームズ案件と認定され、あっという間に売り切れたそうです。小さい会社なので、この布を使い切ったら再販は無いらしく残念ですね。またNHKのラジオでホームズを英語で読む番組、終わったと言う方と始まったと言う方がいらっしゃってどういうこと?と思ったら、半年プログラムの再放送(「エンジョイ シンプル イングリッシュ」金曜日)が始まったばかり、毎週五分、簡単な英語にしたホームズ短編を二回で一話聞き取る番組です。おかげさまでNHKゴガクというアプリを使い私も勉強を始めました。
 後半の発表は外海靖規さんによる一年前も大好評だったゴシック小説とシャーロック・ホームズ との関わりシリーズ。今回は《バスカヴィル家の犬》から「少女はなぜ死んだのか ダートムーアの魔犬とロマンティックラブの呪い」 魔犬伝説で亡くなった少女の死因をゴシック小説の流儀で考えます。《バスカヴィル家の犬》少女の死の場面の翻訳を見比べると新しい訳3点は高所落下説を取るが原文にはそのニュアンスはない。Google翻訳が‘maid’を「乙女」と訳してるのに感心した。少女はヒューゴーに呪いをかけるために村では禁忌の魔犬の地に敢えて逃げたのではと推測する。ゴシック小説では凌辱された乙女は必ず死ぬルールになっているから、彼女もレイプされたのでは。
 反対にやはりゴシック小説ストーリーの《美しき自転車乗り》はassaultとあるので婦女暴行があったとする説があるが、そうは思わない、なぜならば彼女は死なずに幸せになっているので。このような話をユーモアたっぷりでお話しされる。『パミラ』と『マンク』は分厚くて高いけど絶対おすすめだそうです。質疑応答でホラー小説の話になり、一番怖かったのは『リング』。パンデミックな怖さ。近頃の怪談が呪い方面に行ってるのもその傾向か?とのこと。
 二次会は会場向かいのいつもの中華料理店で。参加者11人に「感染予防のため、取り箸で分け、口に入れたらマスクしてください」とお願いしまして、協力していただいてありがとうございました。