第264回豊中仏滅会レポート
福島 賛
厳しい寒波もようやく一段落し、立春を迎えた去る2月4日、第264回仏滅会が豊中市地域共生センター内の桜塚会館会議室にて行われました。昨年は豊中では4月に開催したため、近くの公園でも桜がちょうど見ごろで、春深しというところでしたが、今年はまだ春を待つ段階という肌寒さ。天候が良かったのがせめてもの救いでした。
集まりを見ながら定刻より10分ほど遅れて開会しました。
発表は、まず林さんの「The Noble Bachelor ノート」から。《独身の貴族》に対する作品分析が行われました。人気投票で下位に沈むという作品ですが、プロットとしてはありきたりで、謎があまりなく、ホームズがあまり活躍しないからと、理由を挙げられるといちいち納得できるものの、だからこそあまり注目されていないせいなのか、研究のしがいもあるようで、多くの愛ある指摘(ツッコミ?)がありました。描かれている貴族階級・結婚式があったとされる教会の謎はもとより、メモの両面が鉛筆で書かれていたからこそ手掛かりが残ったという点は、漫然と読んでいると見逃し勝ちでしょう。
「アメリカ人の花嫁」に関しては洋書も引用され、詳細なデータも引いておられました。このテーマに関してはドラマ「ダウントンアビー」でもお馴染みで、NHKBSで3夜にわたりドラマで伯爵夫人コーラを演じるエリザベス・マクガヴァンが案内するドキュメンタリー「海を越えたアメリカン・プリンセス」が扱った話題ですが、後で調べると番組はもう7年前の2015年のことでした。ついこの前のことと思っていましたが、時の流れを感じる結果となりました。
各自で用意した飲み物と差し入れのお菓子によるティーブレイクの後、近況報告では関西支部のHPの課題と解決方法などが話題に上がりました。中尾さんからは今年の追分フォーラムについて、日程が5月5日・6日に決まったことがアナウンスされました。その時は気が付いていませんでしたが、新英国王チャールズ3世の戴冠式〈Coronation〉が5月6日ですので、聴衆の集まりが気になるところです。
2番目の発表は長谷川さんの「ホームズ物語とフランス」。奈良日仏協会にも所属されて15年とのことで、ずっと温めて来られた話題の模様。
ホームズ物語に登場するフランスの街モンペリエのお話を皮切りに、ホームズが研究した「コールタール誘導体」について先行研究もまとめながらその正体を論じられました。
他にも2021年にレジス・メサックの『探偵小説の考古学』を訳された石橋正孝さん(立教大准教授)の著作を紹介したり、プルーストについて論じた坂本浩也さん(立教大教授)の著作について触れたりされました。プルーストは作品や書簡の中で度々コナン・ドイルに触れているとのこと。石橋さんは日本シャーロック・ホームズ・クラブ会員でもいらっしゃいます。また、最後に言及された比較的最近の仏文学者であるミシェル・ウエルベックについては、筆者は恥ずかしながら全く存じ上げなかったのですが、最新作でドイルについて触れているとのことで、引用文を紹介してくださいました。奈良日仏協会機関紙で連載されていた同じタイトルの記事も配布していただけたのは出席者の特典と言ったところでしょうか。
その後は次回265回仏滅会の幹事吉川さんからアナウンスがあり、片づけをして1次会は終了しました。会場は一部暖房が効きにくく、寒い思いをされた方もいらっしゃったようで、お詫び申し上げます。
次回4月の仏滅会は大阪梅田で開催ですが、感染状況はまだまだ油断ならないものの、コロナ禍前の日常に一歩ずつ戻りつつある中で、また無事に開催できると良いと思います。
2次会は13名が近くのイタリアン・レストランを占拠してコース料理を堪能しました。メニューには菜の花やしらすなど、心なしか春の香りが感じられて満足していただけたかと思います。今回も副幹事を務めてくださった出嶋さんは2次会も色々お助けいただきました。他にも各会員のご協力もあり、無事に一日幹事を務めることができました。この場を借りてお礼を申し上げます。