11月の話題
ようやく《まだらの紐》の大研究すすむ
本年10月の奈良仏滅会では、充実した研究が2件発表された。その内の1件が名作《まだらの紐》のトリックの謎に関するものであった。当日の幹事の渡辺さんによるWEJ11月(541)号に掲載された報告をまず引用しよう。
追分フォーラムでの平賀さんの発表での呼びかけ「JSHCで実吉先生に否定された『まだらの紐』のトリック、成立させる妙案を持つシャーロッキアンよ出よ」に応えて三人の会員が調べまくったことをパワーポイントで発表。追分フォーラム後に尋ねた軽井沢タリアセンで18世紀女性博物画家の展覧会があり、ワニと格闘するまだらの蛇が皿からミルクを飲んでいるように見える絵をみたのだそうだ。
同じWEJ11月号に共同研究者の一人である中尾さんから「まだらの紐大研究(一) まだらのミルクヘビの謎」と題した研究も掲載されている。
追分フォーラム終了後、中尾、眞下、森田の三会員が、町内のタリアセン(遊園地・文化施設)に保存されている旧朝吹登美子さんの別荘睡鳩荘を訪れ、「コビトカイマンワニ」と「ミルクヘビ」が格闘している絵を見つけたのである。ワニはヘビをくわえ、ヘビはワニの尻尾に絡みつき頭は皿からミルクを飲んでいる図柄に見えた。実吉さんは「ミルクを飲む蛇」「後ろ向きに移動が可能な蛇」「口笛を聞き取ることのできる聴覚機能を備えた蛇」は存在しないはず、《まだらの蛇》のトリックは不可能であると論じている。そこで平賀さんはJSHCがミステリ愛好者の団体であるならば、実吉さん指摘の謎を解いてこのストーリイを完結させよとアピールしていた。しかし実吉説発表後半世紀を経て、JSHCには博識な会員は少なくないが、この謎に取り組み、総合的に解き明かした会員はいないと問題提起していた。
実吉説発表後半世紀にして、ようやく関西支部の三人の会員による本格的な研究が緒に就いたのである。そして夏の暑さにもめげず三人の会員がそれぞれの方法で研究に取り組み、10月の仏滅会で「まだらの紐とメリマンのミルクヘビ」と題した研究発表と11月からのWEJで「まだらの紐大研究」と題した共同研究者3名二夜研究の第1回報告が行われたのである。前記仏滅会幹事の渡辺さんは、仏滅会報告で「活発に意見交換ができて大変楽しかったです」と締めくくっている。